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今際の道
さて二日経った週末のこと。超占いの館の前にやってきたのはマサルと無扇坊である。
敷地の前には相変わらず御礼参りの車列が並んでいる。もっもと以前とはその数は減っているが、マサルはそのことに気づかなかった。
無扇坊は遠くに見える屋敷を、険しい顔で眺めていた。
「どうですか?何か感じますか」
しびれを切らせてマサルが尋ねた。
「いかん。いかんのう。強力な結界が張られておる」
「そこに並んでいる車はみんな、御礼参りらしいんですが、我々も並んでみますか」
「いや。中に入るのは簡単だがな、わしの霊能力が効かんのよ」
「それはまずいですね」
「他に心当たりはないのか。霊狐が酒を飲みに出るところとか」
「堺東に超ウラメシの館という居酒屋がありますが」
「居酒屋か。時間は早いが、いってみるか」
と、ふたりは屋敷から離れていった。
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そのふたりからさほど離れていないところにミチコはいた。しかしそこはアビーの呪術によって開かれた、あの世とこの世を繋ぐ今際の道の途中であり、互いの姿を認め合うことはできなかった。
竹林の中に続く一本道をミチコは歩いていた。道の両側には、野良仕事に励む老人の姿があった。
「おい、爺さん」
ミチコの呼び掛けに、老人は腰を支えながら身を起こすと、
「どうした?道に迷うたかいな」
ミチコは彼の言葉を無視して、
「この道はあとどれくらいで完成するの?」
「さあ。わしらはただ鳥居を造っては建て、造っては建てるだけじゃから、そんなことは知らんのう」
「現場監督みたいな人はいないの?」
「そんなものはおらんが、そうや、あの埴輪人形なら知っとるかものう」
「キビのことかな・・・どこにいるか知ってる?」
「道の突き当たりですわ。もうちょっといったところですかね」
キビは何故そんなところにいるんだろう、とミチコは思いながら、再び歩き始めた。
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