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「ちょっと小ぶりだけど、通るかな?とにかく足から入れてみるか」
このあいだ葉子が出てきたマンホールを、今ふたりは上から入ろうとしていた。問題は無扇の身体のサイズだが、マサルが上から押し込むようにすると、無扇の腰、胸、そして肩が中に入った。
穴から無扇の姿が消えると、マサルもあとに続いた。
そこは上から覗いたのと同じ、下水が流れるだけの排水溝であり、その脇に狭い道があるだけだ。
「外れですか」とマサルは問いかけた。
「さあな。しかし何かいる」
無扇はそう言うと、壁に向かって、両手を広げて反時計回りにゆらりゆらりと腕を回した。
すると、なんでもないグレーのコンクリート壁から笹の葉や竹の枝があらわれ始めた。
「それは、竹林・・」
マサルは思わず声に出した。しかし次の瞬間、あわてて口を抑える。
竹林の向こうに、女性と埴輪人形が立ち話をしているのだ。女性は占いの館で案内役をしていた女だ。
マサルは無扇と顔を見合わせた。無扇は人差し指を口にあてて、声を出すなと指示したあと、顔を近づけて「様子をみるのだ」と言った。
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「アビーさまの後ろでパッコンパッコンやってるお兄ちゃんヤナ。そうか、ミッちゃん、あの人スキやったんか」
「好きというか・・そうやね、私、安倍くんが好きなの。だから死なれるのは嫌」
「操り人間を所望してるのは霊狐ヤロ?霊狐を追い出したらいいんチャウ?」
「キビ、この道をいつまでも開通しないようにしてくれない?ここが繋がらないと次に進めないんだから」
「いやモー遅い。明日中に繋がるのは爺さんたちが姫さまに連絡済みダヨ。たぶん明後日の朝には姫さま、行動をオコサレるんちゃいますか」
「えー!もう明日繋がっちゃうの!」
コホン!
無扇は空咳をして、ミチコとキビに目を向けさせた。
「何?なんでそんなところに?」
「わしゃ剛力無扇という坊主じゃ。おのれらを助けに来た」
ミチコは無扇の体格に目を見張っていたが、その横にちょこんと立っている男に目がいった。
「あれ?あんたはこの間の客ですよね」
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