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ミチコとの話し合いが済んだあと、無扇坊再びの大技で、ふたりは下水道に戻った。
それからその場で狭い階段穴を見上げた。
「地上には出れなかったんですかね」
とマサルがつぶやくけれど、無扇坊はそれには返事しないで、窮屈そうな穴に身体を押し込むと、階段を上がり始めた。
マサルに下から押し上げてもらい、なんとか地上に上がれた無扇坊は、階段を上るマサルを片手で軽々と引き上げた。そこでひと息ついたあと、ふたりは顔を見合わせた。
「本当にあの女、連絡してくるかの」
「どうでしょう。でも彼女は本気のようでしたよ」
ミチコはふたりに阿鼻姫の出発を知らせると約束したのだ。
知らせを受けたマサルはすぐに無扇坊と合流し、古墳の地下墓地近くで阿鼻姫を待ち構える。
そこで無扇坊が阿鼻姫から霊狐を引き剥がす、という段取りだ。
霊狐を引き剥がされた阿鼻姫はどうなるのか。これはさきほどミチコが無扇坊に聞いたことだが、
「たぶん、阿鼻姫は千六百年前の古代に戻る。そこで生まれ変わるのか、それとも死者として埋葬されるか、そこまではわしはわからん」
と無扇坊は答えたのだった。
ミチコは続けて尋ねる。「それで、操り人間たちは?」
「霊狐の毛玉が身体から出たら、元の人間に戻れるはずだ」
「出るって、どこから」
「そりゃ尻からに決まっとる」
「霊狐は?」と、これはマサルが聞いた。
「飛び出した霊狐はすぐに誰か別の人間に取り憑こうとするだろうな。それを取っ捕まえなければならんが、それはわしの仕事だな」
「無扇さまにお任せします」
「埴輪人形が今際の道は明日中に貫通すると言っていた。悪いが明日の夜は泊めさせてもらうぞ」
「ええ、もちろんです」
と返事したが、そうなると無扇坊の肉欲が一番の心配の種となったマサルであった。
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