秦荷坨

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いつしか部屋の隅に雄蛇の姿があった。チロチロと舌を出しながら、じっとふたりの様子を見ている。 ひとつ小石が置かれるたびに「冷たい!」と声を出してみたり、笑い出してみたり、置く石の半分くらいはこぼれ落としてしまう。それが楽しくて、ふたりはその遊びに熱中した。 「ああ、熱い!吾も脱ぐぞ」 荷坨はまだ少年とはいえ、阿鼻よりは四、五歳上、裸になるとヘソ下のモノは一人前にそそり立っている。 「さあ、今度はどこに置こうかなあ」 と片膝立ちで尻を上げたとき、彼の背中から狐の尾が覗いた。 雄蛇はそれを見るとすぐさま部屋の隅を移動して、荷坨の背後にまわった。 荷坨の尻から尾が生えている。それが左右に振られるたびに、尾は伸びてくる。やがて尾の付け根である獣の尻があらわれた。 荷坨のアヌスが広がってゆく。すると「ほれまた落ちた~。あ~ん姫ぇ、今度!落と、落としたら、この身体、うーん!食っちゃおうかな~」という声も喘ぎ混じりになっていく。 荷坨の尻から、獣が抜け出ようとしているのだ。そしてとうとう、獣の頭が抜け出た。 霊狐であった。 霊狐は悠々と荷坨の身体をまわって、阿鼻の足先で立ち止まった。霊狐はまさに今、阿鼻の身体に侵入しようとしているのだ。 クンクンと匂いを嗅ぎながら阿鼻の股ぐらに近寄っていく霊狐を手助けするように、荷坨は阿鼻の太股の付け根あたりを擦り始めた。 「あッ、荷坨さま、ずる~い。こそばしちゃダメ!」 「でもさ、ここらへん触られたら、気持ちよくないか?」 阿鼻は黙った。 それを待っていた霊狐が、阿鼻の股の間に頭を突き入れようとしたそのとき、雄蛇が霊狐の足先に噛み付いた。 キャン!と霊狐は足を振ると、その場から跳び跳ねた。雄蛇もまたとぐろを巻いた体を弾ませてジャンプする。蛇の細かな歯が霊狐の尾の根元を襲った。 霊狐が再び悲鳴をあげると、阿鼻姫は顔をあげた。そして初めてその姿を見た。荷坨もまた呆然と霊狐を見ていた。彼も霊狐の姿を見たのは初めてだったのだ。 「バケモノ!」 蛇に噛まれた霊狐は、その姿を露にして、ジタバタ跳び跳ねるが蛇は離れない。 子どもたちの叫び声が聞こえたのだろう、遠くから大人たちの大きな足音が聞こえてきた。
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