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「どうしたの?数日休むって聞いたけど」
葉子は潤んだ目を庭代さんに向けながら、ううん、と首を振った。
「もう大丈夫です。心配させたんじゃないかなって気になって、寄らせていただきました」
そう言うと、六本パックの缶ビールを手渡した。
「あ、ありがとう。でもよく僕の家、知ってたねえ」
「森本さんに電話して、聞きました。そうだ、彼にも今度お礼しなくちゃ」
「とにかく入って。さ、沖本さんも」
と庭代さんが芙美に顔を向けると、葉子はそこで初めて芙美の存在に気づいた。
「沖本さんじゃないですか。あれ?二人で帰ってきたってことは、庭代さん!沖本さんが男嫌いだとか言ってましたけど、あれってカモフラージュでした?」
芙美は庭代さんを睨んだ。柳さんにそんなことを話すなんて。まったくデリカシーのない男!
庭代さんは眉を八の字にして、「ふたりとも、とにかく入ってください。」と言った。
部屋に案内された芙美は長ソファーにどんと腰をおろした。すると葉子はそのすぐ横に、腰をくっつけるように座り、おろした手で芙美の手を握ってきた。
芙美は気味が悪くなってお尻をくねくねさせて距離を開けた。
そこに庭代さんが缶ビールを二本と、自分用に炭酸水を持ってきた。
「ふたりとも飲めますよね。僕はダメだから」と缶ビールをふたりの前に置いた。
すると葉子は早速その一本を手に取るとプルタブを引っこ抜き、そのままグイッと飲みだした。
「沖本さんとは例のことを話し合ってるだけです。君が出社してたのなら、一緒に来てもらってましたよ」
「ふーん。じゃあ沖本さんはやっぱり男嫌いなのか」
そう言うと、葉子は芙美の手を握り直し、卑猥な目で彼女に微笑んだ。
芙美は困惑しながらも、葉子の様子をじっと観察している。
「ところで庭代さん。昨日の夜、超ウラメシの館、行きましたね」
「え?!」
「そうなんですか、庭代さん」
と、沖本さんも問い詰める。
「行きましたよ。そりゃあの時は行かないと言いましたけどね、古代人の阿鼻姫が化けてるなんて聞いたら、調べるしかないじゃないですか」
「白状しましたね。で、どうでした?いい人、いました?」
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