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「賑やかでしたよ。みんな愛想がよくて、大騒ぎです」
「それで、庭代さんは誰かお友だちが出来ました?」
と芙美が冷ややかな目をして聞いた。
「いえ。早々に退散しました。もともとアルコールがダメだし、それにみんなの顔が、というか目が」
「目がなに?」と葉子が目を細めて聞き直した。
「みんな同じ目をしてるんです。そう、つり目です、狐眼って言うのかな」
その言葉に葉子はギャハハハっと大笑いだ。
「それは可愛い子ばっかりってことじゃないですか。なんで声、かけなかったんですか?ひょっとして、好きな人がいるからですか?沖本さん?それとも私?」
「君、ずいぶん飲んでるみたいだね」
庭代さんが呆れ顔で言った。
「はい、飲んでますよ。ねえ、沖本さんも飲みましょうよ。庭代さんも男になりましょう!」
「なぬ?飲めって言ってるのか?よし、それなら付き合ってやるよ」
と、冷蔵庫にわざわざビールを取りにいった。
「さ、沖本さん。ふ・み・ちゃん」
「もう、しょうがないわね」
芙美はもともと好きだし強い体質だ。手渡された缶ビールを一気に飲み干した。
「いや~ん、男前~」
葉子はそう言うと、芙美に抱きついた。
芙美もそう言われると気分がいい。彼女の頬にチュッとすると、
「あ!見ィちゃった~!」
缶ビールを抱えながら庭代さんが戻ってきた。
「はい、どうぞ。君たち何してもいいけどね、一応僕も男だから。狼が近くにいるのを忘れちゃいけませんよ。酔っ払って酔い潰れたら、何されるかわかりませんよ」
「あら。酔い潰れないと、なにも出来ないんですか」
と葉子が再び絡んでくる。
「ちょっと刺激しちゃおうかなあ」
葉子はそう言うと、おもむろに立ち上がり、ブラウスのボタンをはずし始めた。
「え、何する気?」と芙美が聞いた。
「こんな服着てるから、庭代さんがいつまでも男になれないのよ」
葉子はブラウスを脱ぎ、スカートも脱いだ。
「ねえ。庭代さんがダメなら芙美ちゃんでもいいわ。私、欲しくなってきちゃったの」
そう言うと、芙美に抱きついてきた。
「柳さん、飲みすぎだよ」
庭代さんは葉子の背中に手をかけて、芙美から引き離そうとした。すると葉子はそれではと、今度は庭代さんに絡みついてきた。
「センパ~イ。あたし、ずっと前からエッチなこと考えてました~」
呆然とする芙美の隣に無羽があらわれた。
( あの娘、霊狐に操られてるね。なんとかしないと庭代さんも芙美も取り憑かれちゃうよ 。あたしなんかきっと追い出されちゃうわね )
「ええ?どうしよう」
( あたしの真似、してみる?空手チョップってやつだけど )
「無羽はやってくれないのね。じゃあ、やってみる」
( そうこなくちゃ!)
庭代さんの唇を奪おうと、葉子は彼に抱きついたまま、顔をぐいぐい近づけていく。
その後ろに芙美がすっくと立ち上がると、腰を落として空手チョップ!
芙美の手刀が柳さんの首筋を打つと、葉子はガクッと気を失った。
呆気に取られてぼおっと顔を見上げる庭代さんに芙美は、
「阿鼻姫に操られてるみたいですね」と言った。
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