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「お酒の影響ですかね」
そう言うと、庭代さんは不安な目を芙美に向けた。
「多分そうでしょうね」
葉子は下着姿の上に毛布をかけられて、芙美の膝枕で眠っている。
「昨日までの柳さんとは、明らかに顔つきが変わってました。昨夜の居酒屋ね、あそこにいた連中と同じ目付きになってたんです」
「つり目ですね。私は化粧でもしてるのかと思ってました。つり目って、やっぱり可愛いから」
「そんなことより、柳さんはやっぱり取り憑かれているとみて間違いありませんね」
「ですよね。昨日まではなんともなかったのに」
「高野山の坊さまに相談する話、早急にしないと。それにしても沖本さん、さっきは凄かった。段持ちと言ってたのは空手だったんですね」
「あ、いや~、なんか恥ずかしいですぅ」
そう言うと、両手で顔を隠した。
「僕も今まで変な気起こさないでいて、良かったわ~って思いました」
「いえいえ、変な気起こしてくれて全然いいんですよ。待ってるんですから」
「え?」
自分の失言に気づいた芙美は膝の上の葉子の頭や肩をバシバシ叩いて、
「じょ、冗談ですよ。ジョーダン!私もちょっと飲み過ぎたみたいで。あ~暑!、暑くなってきちゃった、一枚脱ごうかしら、なんてね!」
そんなことをしたものだから、葉子は目を覚まして、もぞもぞと身体を起こした。
「うーん、ここはどこ?あれ、お二人さん、どうかしました?あ!なんか首が痛い・・」
「なんだ覚えていないのか。飲み過ぎなんだよ」
庭代さんが強い口調で言うと、
「はあ。そうみたいです。なんかご迷惑かけました?あれ~なんで服脱いでるの?!」
「柳さん、何かあった?なんか顔つきが違ってるような・・」
と芙美が心配そうに尋ねた。
「ううん。ホント酔っ払っちゃったんですね。あ~恥ずかしい」
葉子はそう言うと、立ち上がって、ブラウスとスカートを着はじめた。
庭代さんや芙美の目の前なのに、恥ずかしがっているようには見えない。ふたりは顔を見合わせて、やはり!とうなずいた。
ちゃんとした格好に戻った葉子はふたりの前でちょこんとお辞儀をした。
「すいませんでした。私、何したのか覚えてないですけど、おふたりの前では二度と乱れませんから」
「そんな風に謝らなくても」と庭代さん。
「いえ!失礼なことをしたのは私ですから。でも係長には黙っててください。今週は休ませていただきますけど、来週からはまたよろしくお願いします!それじゃ今夜はこれで失礼します。お邪魔さまでした!」
そう言うと、逃げるように部屋を飛び出していった。
バタンとドアの閉まる音を聞いてから、
「覚えてないって言ってたけど」
庭代さんが言いいかけると、
「ぜったい嘘ですね」
芙美がそのあとを続けた。
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