自覚

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自覚

「シュウ…」  紘哉さんとのお出かけから一週間が経った。  今日はシュウと2人で出かけていた。  オレたちはコーヒーショップに入って新作のフラペチーノを口にしていた。 「何?」  満を持してというか、オレは紘哉さんへのことについてシュウに話そうとしていた。  けれどなかなか言葉にならなくて、それに耐えかねたシュウが苦笑する。 「何さ。まあどうせ紘哉さん?のことでしょ?」  ずばり彼の名前を言い当てられ、うっと言葉に詰まったけれどオレは小さく頷いた。  自分で言うのはなんだけどオレは色々分かりやすいタイプだ。  しかも相手はシュウなのだから隠し通せるわけが無い。 「お、オレさ…紘哉さんのこと、好きかも」 「うん、いや知ってたけど」  今更?なんてふうに言うシュウにそうだよねと相槌を打つ。  きっと他人から見れば以前から好きだったって丸わかりなんだろうなと思う。 「で、でもねこの前…!」  そう言ってオレはこの前の日のことについて話した。  勿論、帰りに聞いた意味深(に聞こえた)あの言葉も。 「なるほどね」  話を終えるとそんなふうに言ってうんうんとシュウが頷いていた。 「それ、脈アリなんじゃないの?普通に」 「へ!?」  少しづつ吸い上げていたフラペチーノが喉の変なところに入って小さく咳き込む。  そんなオレを見てくすくすとシュウが笑う。 「わ、笑い事じゃないって!」 「ごめんって」  オレの言葉に笑うのをやめて、シュウもフラペチーノを1口飲んでいる。 「脈アリ…かもしれない、って言っても、何すればいいかわからないよオレ…」 「いや、俺も分からないけど」 「なんで!?オレより恋愛経験あるんだから教えてよ!」 「いや、恋愛経験って言っても1回だけだしもう7年も前だし」  完全に他人事のシュウにええ〜、なんて駄々をこねる子供のようにアドバイスを求める。 「…じゃあ、もっと定期的に連絡取り合って会えばいいんじゃない?分かんないけど」 「…でも何話せばいいかわかんないし」 「それは俺も分からないけど」  はは、なんて苦笑しながらまあがんばりなよなんて応援しているのかしていないのか、よく分からないような言葉が返ってくる。  どうしようなんて1人うんうんと悩んでしまって、その後のシュウの話はあまり頭に入ってこなかった。  オレはいつもそうだから、シュウも分かったようにあまり沢山は話をしなかった。
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