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 10分程車を走らせるとその場所に着いた。 「わ…綺麗」  横からそんな声が聞こえる。  そこは向日葵畑だった。  本当は他の花もあるけれど、俺が連れてきたかったのはここ。  悠斗に似てるから向日葵は好きだ。 「他にも色々咲いてるらしいからさ、見に行こうよ」 「うん!」  そう言って2人で車を出た。  勿論、しっかりと指輪を持って。 「こんなところあったんだ!知らなかったな」 「悠斗が喜びそうかなって」 「すごい嬉しい!ありがとう」  そう言って嬉しそうに微笑むから俺まで笑顔になる。  いつものように2人で手を繋いで、花畑を歩いて回った。  向日葵の他はラベンダーくらいしか俺には分からなかったが向日葵以外にも色んな種類の花が咲いている。  俺もそれは綺麗だと思うし、悠斗もキラキラとした目で花を眺めている。  そんな様子を写真に収めて、また幸せな気分になる。 「あ!今写真撮った…!?」 「撮ったよ」 「…オレ写ってるならあとで消しといてね…?恥ずかしいから」  少し顔の赤い悠斗に分かったよなんて返事をするけれど、消す気は更々ない。いつものことだけど。  またホーム画面変えておこう、と決めてスマホをしまう。  ちなみに今は以前行った猫カフェでの写真だ。  10分もすれば花畑を周り終わったようで、最初の向日葵畑に戻ってきた。 「めっちゃ綺麗だった!楽しかったからまた来たいな」  嬉しそうな顔でそう言ってくるから、そうだねと俺は答えた。  …でも、まだだ。 「…悠斗」 「何?」  俺の少し前を歩いていた悠斗がくるっとこちらを振り返る。 「渡したいものがあって。こっち来て」  小さく首を傾げながら、俺の目の前に悠斗を立たせる。  俺はずっと隠し持っていた指輪の入った箱を取り出す。 「あんまりかっこいいシチュエーションじゃないけど」  俺は悠斗の目の前に跪く。  悠斗の綺麗な顔がよく見えて、少し恥ずかしいけれどそれもどうでもよくなる。  悠斗は状況が呑み込めないようでえ?なんてびっくりした顔で俺を見ていた。 「今までもこれからも悠斗のことを愛してるよ。だから結婚しよう」  ぱかっと蓋を開けて指輪を見せる。  悠斗は目を見開いて、それからぱっと表情を明るくさせて笑った。 「オレもね、言うことあるよ!」  悠斗は指輪を持っている俺の手を、俺を立たせるように引いた。  それから、悠斗はお腹に手を当ててこちらをじっと見つめる。 「子供、出来たんだ。紘哉との」 「…嘘」  今度は俺がびっくりして目を見開く。  もう一度、本当に?そう確認すると悠斗は嬉しそうに笑った。  そんな悠斗を、俺はぎゅっと抱き締めた。  悠斗も、お腹の子も、ありったけの愛を注いで幸せにしよう、そう決めた。
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