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番
時が経つにつれてばあちゃんが亡くなった悲しさも徐々に薄らいでいった。
悲しくない、という訳でもないけれど、だんだんとばあちゃんの突然の死を受け入れる事ができるようになった。
これがばあちゃんの望むことだと思うから。
それからオレは1つの大きな決断をした。
ばあちゃんのお店をオレが継ぐことだ。
どうせならお店もリフォームしよう、そう決めて、ばあちゃんがオレに残してくれたお金は全てそれに使うことにした。
それがきっと最善だ。
オレは店内を広くして、今までの雰囲気も残しながら店の内装もガラッと変えるつもりだ。
きっと自分だけではお店を回せないから、店員かバイトは雇う予定だし、圭や肇さんも誘ってみるつもり。
そんな店のリフォームに約半年、お店の準備に2ヶ月程を要した。
店を開店した頃には季節も冬になっていてとても寒くなっていた。
オレと圭、肇さんの他にベータの女の子2人と男の子1人をバイトとしてお店で雇ってお店は上手く切り盛り出来ていた。
紘哉さんとも幸せな日々を送っているし、毎日楽しい。
何て、いつも思っているけれどまだ番にはなれていない。
2人でヒートはいつも過ごしているし、プレゼントも沢山貰った。
紘哉さんはオレに沢山愛情表現をしてくれるおかげで知らない女の人やΩの人に嫉妬することも無かったし、紘哉さんはオレのことを愛してくれてるって毎日実感出来る。
だから番になっていないことに不安は感じない。
オレは十分に幸せだ。
そんなふうに思っていた、2月末のある日。
「…次のヒートの時、番になろう」
次のヒートはあと2週間程ある。
突然そんなことを言われてしまってオレはびっくりして紘哉さんの方をじっと見つめてしまった。
「ごめん、びっくりさせた?」
「…うん、びっくりしてる…」
そんなオレをくすっと笑って、ぎゅっと抱き締めてくれる。
そんな紘哉さんの腕の中は心地良くてずっとここから離れたくない。
「…どう?番になってくれる?」
「…うん、当たり前だよ…、だって紘哉さんのこと大好きだから」
そう言ってちゅ、と触れるように紘哉さんの唇にキスをして、少し照れくさくて笑った。
「絶対幸せにするよ」
「もう幸せだけどね?」
「じゃあ今以上に」
「あはは、楽しみにしてるね!」
そうやって、オレは紘哉さんと番になる約束をした。
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