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 心地良い暖かい目覚めだった。  いつものように2人で体を重ねたあとすぐに寝落ちてしまったようで、オレも紘哉も裸のままだ。  珍しく紘哉はまだ目を覚ましていなくて、滅多に見れない寝顔を見ることが出来た。  いつもより少しだけ幼く見える寝顔は可愛らしくて、思わずぎゅっと抱き締めた。  するとそれに気づいたようで頭上で唸るような声が聞こえる。 「悠斗…おはよう」 「あ、ごめん起こしちゃった…おはよう」 「大丈夫だよ」  そう言ってオレを抱き締め返してくれる。  数週間前より随分暖かくなったように感じる、のは今紘哉と一緒にいるからかな。  敬語を外す時と違ってさんを外すのはすぐに慣れたし、もうそれが普通になっている。 「ひゃ!!」  突然首の後ろ辺りが擽ったくなって声が漏れた。 「ごめんごめん。くっきり付いてるなと思って」  紘哉がくすっと笑いながら謝ってくる。  くっきり付いている、のはきっと項の痕だろう。  番になれたんだ、これでオレは紘哉のものなんだと思うと嬉しくて心が踊る。 「痛かった?」 「ううん。嬉しい」 「なら良かった」  安心したような言葉にえへへとオレも笑う。  そういえば今何時?そう思って時計を見る、と。 「…10時!?」  何と夜の10時だった。  多分これは昼夜逆転コース。やっちゃった…。 「そんな顔しなくても」 「ご、ごめんオレのせいで」 「大丈夫だって。どうせずっと休みなんだし」  そう言ってよしよしと頭を撫でられる。 「お腹空いたからなにか適当に作るけど何がいい?」 「んー、ラーメン食べたいなあ。あっさりしたやつ!」 「じゃあちょっと作ってくるね。薬も飲んどく?」 「ううん。薬はもういいや」  分かったと言って体を起こした紘哉に倣ってオレも体を起こす…いや、起こそうとしたけど。 「いで…っ!?」  いつもの事なのにいつも忘れてしまう。  全身に激痛が走って、体を起こすことなんて出来ない。 「無理しなくていいから、そこにいて」  苦笑して紘哉は寝室を出ていく。  オレはベッドに身を任せたまま、そっと目を瞑った。  眠気なんてやってこないし寝る気もない、ただ紘哉と番になれたことを幸せに思う。  番になれたってことは次は結婚、かな?  子供とか出来たらどうなるんだろう…、なんて、1人で妄想ばかりしてしまう。  こんな妄想、紘哉に知られたら恥ずかしすぎるから心の中に閉まっておこう…。
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