1 特別な出会い

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 伊浜市の中心部への電車通学が決まった時、まず最初に彼が考えたのは混雑を避けることだった。市の山間部で育った彼は、人口密度が高い場所がきらいだった。  それで、始発駅の東鹿島駅から三州鉄道に乗る時、必ず先頭車両に座ることとしていた。  数分でも貴重な朝の通勤通学時間、先頭車両は終点の伊浜駅の乗降階段から一番遠いので、人気がなく座る人が少なかったからだ。  通学し始めてから3週間目のことだった。その日も彼は先頭車両に乗り込んだ。発車してから3駅目に電車が停まろうとしていた。 「次はきさらぎ駅、きさらぎ駅です。出口は右側です。」  アナウンスが終わり、電車が停まると扉が開いた。きさらぎ駅は山間部に近い駅で、これまで彼の通学時間に乗車する人はほとんどいなかった。  しかし今日の朝は、いつもと同じようにのんびり構えていた彼を、こころの底から驚かせることが起きた。
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