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昼休みになって、中島広樹が声をかけてきた。高校に入って最初に話しかけてきて、ごく自然に親しくなれた彼の一番の友人である。
「信次、どうした。僕もとても気になったけど、授業中、ずっと異常な体勢だったよ。」
「今日来るとき、電車の中で長時間異常な体勢を維持した結果だよ。」
「どういう体勢を続けたんだよ。ここでやってみ。」
「こんな風にだよ。いててて。」
「はーん、神木信次くん。きみは電車の中で、向かいの席の誰かを見ないように、わざと右上の窓の外の景色を見続けたのか。しかも、異常な力を使って首を固定させて。」
それから、彼は中島に今日の朝、電車の先頭車両で悲しげな表情をした美しい女子生徒と出会ったことを話した。
中島は言った。
「どういう制服だった。」
彼は答えた。
「そういえば、毎日よく見るような制服だったよ。」
「もしかして、伊浜市立じゃない。」
「あ、そうだ。」
伊浜市立高校とは、彼が通う伊浜北高校と細い道を挟んでとなりにある女子高校だった。当然、バス停も同じだから、伊浜北高校の生徒は伊浜市立高校の制服をよく見るのだった。
「信次、もしかしたら大ラッキーだよ。これから毎日、朝と夕方、その女子と同じ電車の同じ車両に乗れるじゃないか。そして自然に知り合いになるんだよ。がんばれ。」
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