涼雨

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涼雨

しっとりとした空気が 雨のはじまりを 知らせてくれる 梅雨時になると 感じる 埃と湿った空気が入り交じった なんとも言えない匂い 小さな頃から 何故か ワクワクしたものだった 祖母に連れられて 近所のおばさんたちに 新しい傘を見せびらかした時も 初めて男の子に意地悪されて 泣きながら歩いた 帰り道も 背伸びして 大人びた服で着飾り つまらない夜を過ごした時も 親と喧嘩して 家出した時も 丁度、こんな風に しっとりとした空気を 感じた もうあの頃には 戻れないのか いくつもの時を数えて 恋する不器用さも 人に対する理不尽さも いろんな意味で大人になった 少しずつ 物事がわかって 便利になった代わりに 少しずつ あの頃にはあった 何かを失っていってるように 感じる 大人になるって 寂しくなることなのかな 生きやすくなるにつれて どこか 虚しくなるのは …雨のせい? * おわり *
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