5人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
涼雨
しっとりとした空気が
雨のはじまりを
知らせてくれる
梅雨時になると
感じる
埃と湿った空気が入り交じった
なんとも言えない匂い
小さな頃から
何故か
ワクワクしたものだった
祖母に連れられて
近所のおばさんたちに
新しい傘を見せびらかした時も
初めて男の子に意地悪されて
泣きながら歩いた
帰り道も
背伸びして
大人びた服で着飾り
つまらない夜を過ごした時も
親と喧嘩して
家出した時も
丁度、こんな風に
しっとりとした空気を
感じた
もうあの頃には
戻れないのか
いくつもの時を数えて
恋する不器用さも
人に対する理不尽さも
いろんな意味で大人になった
少しずつ
物事がわかって
便利になった代わりに
少しずつ
あの頃にはあった
何かを失っていってるように
感じる
大人になるって
寂しくなることなのかな
生きやすくなるにつれて
どこか
虚しくなるのは
…雨のせい?
* おわり *
最初のコメントを投稿しよう!