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1.警告灯
七月上旬にしては気温が低く、肌寒い朝を迎えた日のことだった。
夏月は異様な気配を感じて目を覚まし、おもむろに寝台から起き上がった。薄暗い部屋のカーテンを開けると、今にも雨が降りだしそうな鈍色の雲が垂れ込めている。
学校へ行く。ただそれだけの行為を余計に陰鬱とさせるような空は、夏月の手足を重くし、深い溜め息を吐かせた。
不意に雨粒が窓を叩く。瞬時に焦点が自分の顔へと移り、その瞳に赤色の光が点滅した。パトカーか、あるいは救急車だろう。何台いるのかはわからない。幹線道路を上ってゆく警告灯が、民家の屋根越しに連なった。
不吉だ。
そう思った夏月は、咄嗟にカーテンを閉めた。そろそろ、身支度をしなければならない。夏月の通う高校は、あの幹線道路を下りた場所にある。遠くはないが、徒歩だと数時間はかかる距離だ。今は何時だろう。バスの時刻が気になった。
そろそろ、学校へ行かなければ。夏月は無意識に自分の頸へ指先を這わせ、顔を洗いに部屋を出た。
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