<10・雑多。>

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「これじゃ、美郷ちゃんが言ってた七不思議っていうのがどれかなんてわからないよねえ」 「まったくだ」  つーか。理科室だけで何個あるんだと言いたい。大人気か。そうなのか。 ――これもし全部本当だったら、学校中がなんかの怪談スポットってことになっちゃうじゃん。お化け屋敷かよ。  七不思議というのは、七個だからこそ意味がある。知ってはならない七つ目を知ったら呪われる、というアレ。これではどれが七つ目なのか、そんなものがあるのかさえわからない。恐怖感が薄れてしまって逆に意味がないではないか。 「……その美郷だよ。昨日も帰ってこなかったのに、結局まだ捜索願出さなかったってマジか?」 「うん……」  花火の質問に、麻巳子が苦い顔になって言う。 「あたしも、心配だからさ。昨日それとなく電話で、美郷ちゃんのお母さんに訊いてみたんだよね。でも、大事にしたくないし、きっとそのうち帰ってくるからって。……心配は心配だけど、大したことないって信じたい気持ちが勝ってるかんじ。お母さん自身は、いろんな人のところに電話したり自分で探してみたりいろいろしてるみたいだから、心配してるのは間違いないと思うんだけどさ」  そういうものなのか。花火はわかるようでわからない。確かに、重病患者ほど救急車を呼びたがらないという心理はあると聞いている。救急車を呼ぶと、何かあったとご近所に宣伝するようなもので、あらぬ心配をかけてしまうからだという。  言いたいことはわかる。わかるにはわかるが、それで大変なことになってからでは遅いのではないか。美郷に関してもそうだ。小学生の女の子で、夜遊びするようなタイプでないことは母親が一番よくわかっているはずだというのに。 ――まあ、もし本当に異世界の怪物とやらの仕業だったなら、警察に協力してもらったところで見つけられないんだろうけどさ……。 『球磨美郷の親は、警察に届けを出すのを渋っているようだが……仮に警察の助力があっても、彼女を見つけることはできないだろう。警察の中に退魔師がいれば話は別だろうが』 『お前は友達に約束したんだろう、自分の手で球磨を助けると。……それならよく考えた方がいい。俺の助力なしで、一人であいつらを倒せると思ってるのか?まあ、お前が約束を反故にして、シッポ巻いて逃げるというなら止めないが』  昨日のことは、忘れたくても忘れられない。今でも瞼の裏には、顔のないおぞましい少女の顔と、襲い来る白い人形達の姿が焼き付いている。それから、そんな自分を魔法のような力で助けてくれた涼風夜空のことも。
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