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<11・羅列。>
「着眼点は悪くないんだが」
朝は時間がなくなってしまったので、報告は昼休みになった。花火が麻巳子たちから聞き取りした情報を夜空に知らせると、メモを取ったノートを見て彼は一言そう言った。
「残念ながら異変が起きている七不思議のどこかに本体が隠れている、とは限らない。そもそも、誰かの作り話にも拘らず異変が起きているという可能性も充分ある」
「え」
「お前の見立て通り、今現在お前の耳に入ってきた三十の怪談以外にもまだ探せばいくつか見つかることだろう。ただ、お前の耳に真っ先に入ってきたということは、その三十の怪談が特に流行しているものと見て間違いない。生徒達に、ひときわ面白いと判断されて噂されているものだと言えばいいか。……異世界も魔物は、七不思議の怪奇現象に擬態して悪さをする。噂されている七不思議がそれなりに有名であるならば、それが誰かの作り話だろうがなんだろうが関係ないだろう」
「……言われてみれば」
確かに、これが普通の怪奇現象=幽霊の仕業ならばともかく、そのフリをしている魔物というのならちょっと話は変わってくるだろう。完全に失念していた。
「そもそも、体育倉庫裏の少女、のところに潜んでいたのは本体ではなく式魔だった。実際にお前が襲われて、“異変”が起きたにも関わらず」
「た、確かに。……え、じゃあこの三十の怪談全部当たらなくちゃなんないってこと?」
うへえ、と自分で書いたノートの文字を見つめてげんなりした。普通の七つしかない“七不思議”でも充分面倒くさいのに、それが三十個。気が遠くなるような作業である。
――うわあ、どんだけ時間かかるんだよ……!
その間に、美郷がどうにかなってしまう可能性もあるのに。頭痛と焦りを覚えていると、“馬鹿か”と呆れ果てたように夜空に言われてしまった。
「言っただろ、絞り込む方法はあるって」
「ど、どうやって?」
「極めて真っ当な方法だ。そもそも俺は最初から、体育倉庫裏は“外れ”だとわかっていた。球磨美郷が夜、忘れ物を取りに行くついでに寄り道したのはそこではないとな」
「!」
どういうこと、と目を見開く花火。
「球磨美郷の当日の行動と心理を考えれば、おのずと答えが見える」
がらり、と夜空は教室の窓を開けて、下を見た。実は、この教室は二階。すぐ真下が自分達の使う下駄箱になっていたりする。こうして窓から少し身を乗り出して見下ろすと、正面入り口の赤い三角屋根が見えるのだった。
「お前、あそこは確認したか?」
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