<11・羅列。>

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――保健室も養護の先生が帰っちゃうからしまってるはずだし……屋上も施錠されるはず。地獄へ行くエレベーター、は貨物エレベーターのことだからそもそも鍵を借りることが不可能。これで、残るは……!  永遠に続く廊下。  男子トイレから走り去る少年。  下駄箱で掴まれる腕。  あるはずのない地下への階段。  窓際の赤いメッセージ。  残るはこの五つのみ。一気に数が減った。問題はここからだ。真面目な女子である美郷が“男子トイレから走り去る少年”を目撃したいがために、人気がないとはいえ男子トイレに寄るかどうか?の疑問はあるのだが――まあそれはそれ。根拠としては弱いので、ひとまずまだ残しておくことにしよう。トイレの洗面所に鍵がかからないのは、男子トイレも同じであるはずなのだから。 「俺の見立てでは、まだ白魔は完全にゲートを復旧できていない。魂の全てをこちら側に持って来れている状態ではない。復活のために、力を貯めている段階だろう。……そのために、退魔師に気づかれないようにかなり慎重に怪談に擬態しているはずだ。怪談とは無関係のところで、人を攫うような真似は可能な限り避けているはず」 「だから、涼風は美郷の方から怪談の場所に近づいた、って確信してるわけか」 「その通り。そして、ここからはその怪談の性質によって、球磨美郷がどの怪談に近づいたかを考えることになる。……この五つの怪談の場所と内容については調べてあるんだな?」 「ま、まあ一応」  実は三十個の怪談の中のいくつかは“どいういう怪談なのか噂がぼやっとしている”ものもあったのだが。この最後に残った五つは、比較的話の内容が明確になっているものである。 「じゃあ、その内容を言ってみろ、一つずつ。俺の予想では、そこからさらに絞ることができるはずだ」  随分な自信ですこと。少しばかり呆れるも、美郷を助けたい気持ちは花火も同じである。ノートのページをめくり、えっとー、と語り始めた。 「話してやるから、覚えるなりメモするなりしろよな。ちょっと長いんだから」  この会議、昼休み中に終わればいいのだけれど。
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