<2・消失。>

2/4
前へ
/76ページ
次へ
 ぷう、と少女の一人が頬を膨らませる。 「まあ、あたしもりっちゃんも、作文超苦手だからさ。書き方とか美郷ちゃんに教えて欲しくて拝み倒したんだけどね。そしたら、結構作文だけで時間かかっちゃって……て主にあたしが数行書いては止まりを繰り返して迷惑かけたからなんだけど」  彼女によると。作文の後には、一緒に算数ドリルをやる予定だったというのだ。彼女たちはみんな受験組ではないが(うちのクラスに中学受験組はそもそも少ない。というか、受験組だったら六年生はもうほぼ塾漬けになっていそうなものである。)中学の授業に乗り遅れないために今が一番大事な時!という某塾のうたい文句を信じて課題は完璧に理解して終わらせておきたかったのだという。クラスでも秀才の美郷に教えてもらいながらやろう、という目論見だった。宿題をすっぽかすことも珍しくない花火の感想としては“お前ら超偉いなあ”でしかないわけだが。  ところが作文で思った以上に手間がかかってしまい、算数ドリルに手をつける時間がほとんどなくなってしまったのだそうだ。しかも、いざ算数ドリルをやろうと思ったところで、美郷が自分のドリルを学校に忘れたということに気づいてしまったのである。 「算数ドリルの締切、明後日だからまだ間に合うんだけどね」  困ったように、少女二人は顔を見合わせる。 「でも、明日はちょっと忙しいからできないかもしれないし、今日何が何でも進めておきたいって美里ちゃんが言ったの。だから、ちょっと遅い時間になっちゃったけど学校に取りに戻るって」 「取りに戻ったのは何時くらいなんだ?」 「えっと、あたしが家についた時七時半くらい?だった気がするから……七時過ぎとか、それくらいに家は出たと思う。途中まで一緒に行ったけど、あたしの家、美郷ちゃんの家と学校の間にあるから……」  りっちゃんは逆方向だよね?と彼女はもう一人の少女に声をかけると、彼女はおずおずと頷いてみせた。 「私は、美郷ちゃんの家の位置からだと、学校とは反対方向に家があるから。美郷ちゃんの家で別れてそのまま帰ったから、そのあとのことはわかんないの」 「ということは、学校に無事着いたかも知らないのか」 「うん……」  なるほど、それはなかなか困った状況である。学校で行方不明になったのか、その道中でいなくなったのか誰も分からないわけなのだから。  まあ、七時半頃に学校に来る生徒がいたら、先生達の誰かが気づいていそうな気がしている。というか。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加