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私はビーチサンダル10
雨音が聴こえてくると思い出すのは、あのピンクのビーチサンダル。
私は波に攫われそうになっても、脚の指をグっと強く内側に折って、決して離したりなんかしなかったよ。
ちゃんと家に連れて帰って来たよ。
ふたつとも、ずっと肌身離さず、ここまで一緒に帰って来たよ。
そういう風に、愛して欲しかった。
そんな頃が、私にもあったのだ。
そんな風に雨音が聴こえるたびに、泣いた時間があったのだ。
今でも、雨の日の、雨音の聞こえて来た日の、そんな時にふと頭に浮かぶもの。
それは私が、ピンクの小さなビーチサンダルになった日のこと。
挿し絵 / 九藤 朋 様
素晴らしい小説やイラストを生み出すお方です。
Twitter、小説家になろう、などでご活躍されております。
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