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「チョコレートって身体にいいんだよ。私、毎日食べるようにしてるんだ。これカカオ多いやつだから、甘いの苦手なひとでも十分ー」
「食べたくても生憎両手は塞がってる」
彼の台詞が意味するところはひとつだけだった。
だけど予想は大体出来ていたので、景織子は照れながらも新しいチョコレートの包みを開けた。
事故を起こしてしまっては元も子もないので、運転状況を見計らい素早く横から差し出す。
察した彼が口を開けたが、舌先が指に僅かに触れてき、景織子は慌てて手を引っ込める。
「や、またそういうこと…!」
「偶然だ。車停めるタイミングで、たまたまそうなっただけだ」
危うく落としそうになったチョコレートの塊をなんとか噛み締めながら、龍貴は苦々しく言い放つ。
特になんの苦情もないので、味に関しては無事クリアしたようだった。
だが、確かにちょうど交差点の信号は赤になったが、景織子はいまいち信じられない。
それも偏に、普段の行い故だ。
怪しむ景織子に、龍貴は片眉を吊り上げる。
「やってないのにあくまで疑ってくるなら、これより遥かにエッチな事ほんとに今からするからな」
本気なのか、はたまた脅しなのかー区別のつき兼ねない龍貴の文句に、景織子は口をぱくぱくさせた。
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