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「先週から楽しみにしていたって聞いて、なんて可愛い事を言うんだって思った。髪も、メイクも、ネイルも、俺の為に一生懸命準備してきたのかと思えば、可愛くて仕方なくなってた。そこにそのスカートの長さだ。これはもう海も水族館も全部すっ飛ばして、ホテルに直行されても文句は言えない」
龍貴の言葉に、景織子は弾かれたように頭をふるふると左右に振る。
「海も水族館も行きたい」
「プリンは?」
「食べたい。全部行きたい」
瞬きもせず真っ直ぐ見詰めれば、やがて龍貴の横顔が諦めの息を吐く。
「景織子のお願いは、聞かないわけにはいかないからな」
不承不承といったと感じで、龍貴は妥協する。
「あーいうキスも、夜ならいくらでもしていいって事だよな?」
「…よ、夜なら」
「なら、最後の楽しみにとっておくか」
観念したように笑う龍貴に頬を火照らせながら、景織子はドリンクフォルダーからペットボトルを手に取る。
緑茶と共に、恥ずかしさを喉の奥へと一気に流し込む。
『泊まる用意もしてこい』と言われていた為、今度こそそういう準備も万端だった。
今夜の予定は前以て決まっている。
だからなんら恥に思う返事ではないのだけど、声にすればやはりなかなかの赤面ものだった。
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