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間を持たせる為に、お茶と一緒に買ってもらっていたチョコレートの包みを、無駄に音を立てて開封する。
本当はこっそり支払おうとしたのだが、初デートで男に恥を掻かすなと凄まれ、あえなく失敗した。
そうじゃなくても全部ひとりで払ってしまうくせにと思ったが、怖くてそれ以上は反論出来なかった。
彼の気持ちはありがたいが、自分も社会人の端くれだ。
これから毎回かと思えば、流石にそれは許容範囲にない。
機嫌のいい時を狙って、どうにか解決したい問題だった。
食べてもいいかと一応断りを入れれば『その為に買ったんだろう』と一笑される。
全く以てその通りで、増々変な汗を掻きながら、景織子は個別包装のひとつを開く。
カカオ含量が多いものを選んだ為、甘さはないに等しい。
狼狽えまくりの自分にとっては、この苦さはちょうど良かった。
「食べる…?」
次第に冷静さを取り戻し、隣りの彼に思い切って訊いてみる。
案の定嫌そうな表情をされるが、もうひと押ししてみる事にする。
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