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「した」
「え?」
「だから勘違いじゃない」
「え??」
「なんてな。冗談だ」
「えええ??」
にこりともしない龍貴に、景織子は混乱を極める。
十八番のからかいなのか、それともやはり本当なのかー謝ればいいのか謝らなくていいのか、増々分からなくなってしまう。
「予想に反して酸っぱいのな」
「え?あ、うん」
スイーツ大好き人間としては相当の覚悟をしていたが、初めて食べた時自分も似たような感想を持った。
苦味を遥かに上回る酸味が襲ってくる。
彼もその事を言ってるのだと気付き、景織子は同意する。
「こんなのとても食べ続けられないって思ったけど、でも慣れるとこれがー」
「新感覚の味だな。折角だからもうひとつ味見してみたい」
まさかの催促を受け、景織子は驚いてしまう。
酸味に殆ど掻き消されるが、砂糖は完全にゼロではない
それを自ら『食べたい』とは、どういう風の吹き回しだろう。
「もう一回食べさせてみれば、さっきのが勘違いか勘違いじゃないか分かるかもな」
意味深に『さっきの』を強調する龍貴に突き動かされるように、景織子は新たな包みを開ける。
今度は何にも少しも触れる事なく、彼の口の中にチョコレートは難なく収まった。
「悪くない」
笑う龍貴に、景織子は頬を赤らめた。
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