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煙に巻かれ、全てが曖昧になってくる。
正しいのか、あるいは偽りなのかー彼が本当の事を喋ってくれなければ、知る術はない。
「ふざけてばっかり。いつも振り回されるこっちの身にもなってみてよ」
思わず愚痴るが、運転席から真面目な口調で回答が返ってくる。
「景織子が可愛いから、ついからかいたくなる。悪気はない」
「褒めてもなんにも出ません」
「退屈しないだろ?俺は今日、景織子を滅茶滅茶楽しくさせてやりたいって思ってきたからな。作戦は功を奏してる」
単にいつも通り振舞ってるに過ぎないだろうに、ああ言えばこう言うで、最早こちらの言い分が尽きてしまう。
それでも面白そうに双眸を細める端正な横顔に、いとも簡単に胸は躍る。
悔しいけれど、勝ち目がないのは間違いなかった。
「あなたみたいなひと、今まで会った事ない」
景織子は諦めの境地に達した。
「さっきも諭してあげてるんだか、突き放してるんだか全然分かんなかった。あんな言い方で注意するのあなたぐらいだよ」
コンビニエンスストアでの彼と高校生とのやり取りが甦り、景織子は吹き出した。
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