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『通路を塞いでなんかない』
『入り口は二ヵ所あるんだから、通りたい奴はそっち側に回ればいい』
てっきり煙草を注意してくる奇特な大人かと思いきや、それにはまるで触れてこない。
いきなり現れた風変りな男に怯んでいた彼らだったが、やがて子供じみた反論をしてきた。
だが、所詮は高校生。
端から彼の相手ではなく、勝負は既についていた。
『たった今この俺が、こっちの入り口から店に入りたいんだよ』
その時の男子学生達の鳩が豆鉄砲食らったかのような顔は、忘れられない。
三人共にぽかんとし、それから彼の有無を言わさない絶対的な目力に圧倒され、即座に全員がその場に立ち上がった。
足早に去ろうとするひとりの首根っこを掴まえ、龍貴はダメ出しを与えた。
辺りに散らかったままのゴミを顎で示せば、それらは一瞬で全て搔き集められ、ゴミ箱へと捨てられた。
『よろしい』とばかりに龍貴が小さく頷けば、無事許しを得た彼らは一様に頭を下げ、逃げるようにコンビニエンスストアからいなくなった。
相変わらずの偉そうな態度に、始終ハラハラさせられっぱなしの一連の出来事だった。
彼といると常に刺激的で、暇だと思う暇などないに等しい。
『退屈しない』はある意味、的を射ていた。
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