2.車中にて

14/15

522人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ
『通路を塞いでなんかない』 『入り口は二ヵ所あるんだから、通りたい奴はそっち側に回ればいい』 てっきり煙草を注意してくる奇特な大人かと思いきや、それにはまるで触れてこない。 いきなり現れた風変りな男に怯んでいた彼らだったが、やがて子供じみた反論をしてきた。 だが、所詮は高校生。 端から彼の相手ではなく、勝負は既についていた。 『たった今この俺が、こっちの入り口から店に入りたいんだよ』 その時の男子学生達の鳩が豆鉄砲食らったかのような顔は、忘れられない。 三人共にぽかんとし、それから彼の有無を言わさない絶対的な目力に圧倒され、即座に全員がその場に立ち上がった。 足早に去ろうとするひとりの首根っこを掴まえ、龍貴はダメ出しを与えた。 辺りに散らかったままのゴミを顎で示せば、それらは一瞬で全て搔き集められ、ゴミ箱へと捨てられた。 『よろしい』とばかりに龍貴が小さく頷けば、無事許しを得た彼らは一様に頭を下げ、逃げるようにコンビニエンスストアからいなくなった。 相変わらずの偉そうな態度に、始終ハラハラさせられっぱなしの一連の出来事だった。 彼といると常に刺激的で、暇だと思う暇などないに等しい。 『退屈しない』はある意味、的を射ていた。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

522人が本棚に入れています
本棚に追加