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3.水族館にて
「うわあ、見て見て。すっごいおっきいカニ。…えっと、タカアシガニ?だって」
手招きする景織子の側に寄った龍貴は、水槽の中を一瞥する。
「思ってた事があるんだけど」
「なに?」
「ひょっとしてお前、展示されてる魚介類全部食材として見てないか」
「なっ!?」
思いも寄らない疑いを突然かけられて、景織子は絶句する。
「さっきから、鰯だの鯛だのイカだのタコだのカニだの、美味そうかどうかを基準に興奮してる気がしてならない。ここに来る途中で寄った海でも、涎垂らしながら眺めてー」
「してませんっ。私は純粋に、魚の美しさとか大きさとか形とか泳ぎ方に感心してるだけです」
とんでもない言いがかりを、景織子はきっぱり否定する。
「…まあ、確かにカニ大好きだし?こんなにおっきかったらお腹いっぱい食べられるだろうなあとか、ちょっと考えなくもないけどさ」
なおも疑惑の眼差しを送ってくる龍貴に根負けし、言いにくそうに景織子は付け足す。
自分の勘の正しさを証明された龍貴が、勝ち誇ったように鼻を鳴らす。
その表情が非常に癪に障り、景織子は頬を赤らめながら手を振り翳した。
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