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「もー!すぐそうやって馬鹿にしてくる」
「その馬鹿力で叩かれたら死ぬからやめろ」
景織子をかわしながら、龍貴は肩を揺らす。
「女の力ごときで死ぬってどんだけ貧弱よ」
「分かった分かった。ほら、次行くぞ」
怒りの収まらない景織子の左手を取り、龍貴は歩みを進める。
繋がれた指の一本ずつが絡み合い、現金な胸はすぐにときめてしまう。
まだ完全に許したわけじゃないからねー心の中で強がりながら、景織子は離れないように龍貴の手を握り返した。
それからいくつかの展示物を経て奥へ進めば、一層暗い場所に到着した。
「あ、クラゲだ。写真撮ってもいい?」
形も色も様々なクラゲが光を浴びて水中を浮遊する姿は幻想的で、いつまででも飽きずに見ていられる。
他の見物客が殆どいない事を幸いに、今のうちに好きなだけ撮ってしまおうと景織子はスマートフォンを構えた。
「ちっちゃくて可愛い」
若干低めの位置に設置された小さな水槽。
それに合わせるように身体を屈めた彼の顔がいつの間にかすぐ右隣りにあり、振り返ろうとした景織子はびっくりしてしまう。
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