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「またバシバシやられたら堪ったもんじゃないからな」
「そうやってどんどん狂暴キャラに仕立てないでよ。…嬉しいって、思ってるのに」
景織子の告白に、龍貴の歩みが止まる。
先程までの暗い空間とは打って変わり、陽の光が差し込む通路。
明後日の方向を向いたまま、気恥ずかしさを必死に抑えているのは丸分かりだった。
「これはもう、夜までいよいよ我慢出来ないパターンだな」
そんな景織子の姿に龍貴が微かに口角を上げれば、何かを察したように繋がれた手をぱっと解かれた。
「まだお昼ご飯もプリンも食べてない」
「一食やそこら抜いても死にしゃしない。タバコは死活問題だけどな」
「煙草こそ吸わなくたって死なないでしょ。…まさかと思うけど、それが一番の目的じゃないよね?」
これからの予定を反故するようかのような言動を繰り返す龍貴に、景織子は不安に駆られる。
「冗談のひとつも通じないお前は一体いくつだ」
「…だって、ひとつじゃなく言ってくる」
「だったらコンビニで拾った夜にとっくにそうしてる」
龍貴は正論をぶつける。
「最初こそぎゃあぎゃあうるさかったけど、後は朝までぐっすりだ。これ以上ないくらいのやりたい放題状態だ」
苦笑交じりの意見は、反論の余地はまるでなかった。
景織子は口を噤む。
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