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「男がピーピー泣くな」
きっと迷子だろうと察しはついたが、さてどうしたものかと考えあぐねていればまさかの展開が訪れる。
コンビニでの出来事を彷彿とさせる舌打ちと共に吐き捨てられた暴言に、隣りの彼を信じられない面持ちで見詰める。
掴みかかって無理矢理泣き止ませようかとするのではと焦り、景織子は大慌てで龍貴を宥めにかかる。
「こんなちっちゃいのに男も女もないでしょ」
「男が迷子ぐらいで泣くな、情けない」
「わーわーわー!ストップ!ストップだってばっ」
落ち着くどころか余計に泣かせるような事を平然と口走る龍貴を、景織子は大声で制する。
子供はとびくびくしながら窺えば、濡れた目を大きく見開いている。
突如自分に浴びせられた言葉の処理が追い付いていないようで、泣き声を上げる事も暫し忘れ立ち尽くしている。
良かったと冷や汗を拭いかけ、思い直す。
泣き忘れているのも今の内だけだ。
すぐに先程の何倍もの声量でー寒気を覚え、景織子は龍貴を睨む。
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