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「こんな小さい子になんでそんな酷い事言えるのよ」
「泣いて迷子が解決するか」
「おにっ。あくまっ」
「どうせ勝手にウロチョロして、自分から迷子になったクチだ。甘やかすな」
「子供はそーいう生き物なの。自分だって一回くらいは経験あるでしょ」
「バーゲンに夢中の母親が俺の存在をすっかり忘れて、はぐれた事ならあったな。待てども暮らせども一向に戻って来ない母親に痺れを切らして、自分から呼び出しかけにもらいに行った。『伊集院龍貴君のお母さま、龍貴くん4歳がサービスカウンターでお待ちです』ってな」
淡々と語る龍貴に、景織子は怯んでしまう。
可愛げなさ過ぎな子供時代である。
だが、彼も相当だと思っていたが、母親はその遥か斜め上をいくらしい。
流石この彼を育てただけはある。
付き合ったばかりで取り越し苦労もいいところだが、もしもいつか顔を合わせる機会があったとしたら、考えただけで恐ろしい。
青ざめる景織子の横を、数組の来館者達が遠巻きにしながら足早に去ってゆく。
多分だが、親子連れだと思われている。
目を離した隙にいなくなった子供を巡り、夫婦喧嘩が勃発してると勘違いされている。
見る見るうちに、景織子の面は真っ赤になった。
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