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2.車中にて
「良かった。警察沙汰にならなくて」
景織子が胸を撫で下ろせば、運転席でハンドルを握る龍貴が眉を顰めた。
「何回繰り返すつもりだ。温和な俺もそろそろキレるぞ」
「どこが温和…ほら、そうやってすぐ怒るとこ。乱闘騒ぎにならないか冷や冷やしたんだってば」
「あんな人通りの多いコンビニの前でやるか。場所ぐらい選ぶ」
「やっぱりする気だったんじゃない」
助手席で喚く景織子を、龍貴は鬱陶しそうに左手で追い払う。
「最終的手段のひとつの話だ。そうならずに済んだだろ。どんなにイキってても、子供は子供だ。ちょっと言い聞かせてやれば、大抵のガキは最後には大人しくなる」
しれっとしている龍貴に、景織子は唖然とする。
「脅したの間違いでしょ」
「ひと聞き悪い事言うな。『済みませんでした』って三人揃って謝ってきたのなんかは、可愛げがなかった事もない。俺の説得が功を奏した結果だな」
冗談を言ってるのではないかと思ったが、どうやら至極本気のようだった。
うんうんとひとり頷く龍貴の横顔に眩暈を覚え、景織子は額を押えた。
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