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「でも。辛くなくなっただろ?」
さっきまでとは打って変わって静まり返った車内。
視線を合わせる事が出来ず、流れる景色をひたすら眺めていれば、不意に投げ掛けられた質問に身体中の血液が顔へと集まる。
突然のキスと同時に入ってきた舌先は、口の中からミント味の錠菓を奪っていった。
自分にとって食べるには少し辛過ぎだったから、結果的には良かった。
感謝するべきだとも思うが、でもそもそも有無を言わさず口に入れたきたのは彼自身だ。
なんだか素直に『うん』とも言えない。
ひとり葛藤していれば、新たな問いが放たれる。
「お前の方こそ十分だとエッチだと思うけど」
どきりとして振り返れば、運転中の為前方を向いたままの彼が先を続ける。
「まあ、この間の就活スーツがあれだったから、余計そう映るのかもだけど。明らかに誘ってきてるだろ、それ」
微かに上がった龍貴の口角に、景織子は両手で掴んだスカートの裾を目一杯引き下げる。
だが、伸縮素材ではないので、残念ながら太股の露出度はほとんど変わらない。
大それた目的はなかったのだが、喜ばせたいと思って選んできたのは事実。
それは突き詰めると、つまりそういう事になるだろうかー指摘され、汗がぶわっと噴き出す。
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