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「ア…ナタは…?」
危害を加えないと言われても、怖いものは怖い。
当たり前だ。私は震える声で問いかける。
「……。
…名乗る名は持ち合わせていない。気軽に“お人形さん”と呼んでくれ、愛。」
「なんで私の名前を…?」
「…………靴に名前を書くのがこの学校のしきたりだろう?
名前はそこで見たのさ。」
お人形さんは何を今更、と言ったようなふうに言い
ケラケラと笑う。
「…質問ばかりで悪いけど、どうしてこんなに暗いの?これは夢なの?加害者は何者?どうしてあなたは手足がないの?」
「まてまて、そんなに焦らなくても全部答えるさ。」
まずは、と言いながら私を見つめる
「君はここを夢の中だと言った。それは間違っている。
ここは現実であり、現実でない。曖昧な空間。
ここで死ねば、現実世界の君も死ぬ。」
「現実世界の私?」
「今ここにいる君は精神体みたいなモノ。抜け殻の体は今君の部屋で眠っているはずさ。」
「…それじゃあ、お人形さんは現実世界でも手足がないってこと?」
「ああ、そうだよ。ワタシの場合は現実世界で傷ついたからこうなっているけれどね。」
一瞬、背筋が凍るような殺気を感じたがすぐに止んだ。
かわりにお人形さんの笑い声が響く
「それで、加害者のことだったな。あれは我らを見かけると追いかけてくる。そこまで頭が良くないのか、教室に入ったり廊下を曲がると我らを見失い、追いかけてこない。」
「お、追いかけてくるの?なんで?それに、目玉の形な理由は?」
「………そこまではわからんよ。君が関係してるんじゃないか?たとえば目玉が苦手だとか。」
思い返そうとするが、特に何も思い当たらない
「まあ、無理に思い出そうとしなくてもよかろうよ。
ここにきたショックで記憶が飛んでいるということもあるだろうしな」
記憶が飛んでいる。
その言葉に対しても質問をしようと思っていたが、遮られた。
「そこで、愛に頼みたいことがある。」
改めて私の方に向き直ったお人形さんは私にそう言った。
「別に大丈夫だけど…何をすればいいの?」
「ワタシの手足がこの校舎のどこか……このフロアに二つ、一つ下のフロアに一つ、もう一つ下に一つ落ちていると思う。」
「わかるの?」
「己の一部だからな。だがこれ以上細かいことはわからんよ。」
そっか…と肩を落とし、私は教室を出た。
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