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「ご近所にお引っ越しですか?」 「はい…駅の向こう側…のはずです。すみません…今朝、契約のときに見たんですけど、それぞれ全然違う道を通っているからはっきりとわかっていなくて」 「自分の運転してない車だと余計に分かりにくいですよね」 「榊原くんのマンションもこの辺りだって言ってたけど?」 「そうなんです。だから私は毎日徒歩通勤です。商品はどんどん変えていっているのでお引っ越し後も覗いて下さいね」 栫井さんはそう言うと、ショップカードをはづに手渡しながら 「改めまして…栫井乃愛です。よろしくお願いします」 と挨拶をする。俺とはづが話すのを聞いて‘オーナー’ではなく名乗ると判断したのだろう。河北さんと栫井さんは顔は知ってるが名前は知らないらしかった。そりゃそうだよな…買い物するだけの客なら名前はイチイチ聞かないものだ。 「ありがとうございます。神戸葉月です。来月後半に引っ越し予定です。よろしくお願いします」 「私、最初はこの店の裏側に住んでいたのでこの辺りには詳しいですから、情報収集だけにでも来て下さいね。信頼出来る百々さんのご紹介なので私もどんどん教えちゃいます」 「やった。だいさんより有力情報提供者が現れたね」 「えぇ…俺も一緒に開拓するのに」 「泣かない泣かない。栫井さんに教えてもらったことを知った風に披露するから待ってて」 「ゆづが前に同じようなこと言ってたぞ」 「何て?」 「俺と飲む前に、俺の仕事先の予習をしてきて‘知った風に仲良くなる作戦’みたいなこと言ってた。ゆづもはづも作戦好きなんだな」 「お姉ちゃんが私に似たんだね」 「…それって、ゆづが器用だな」 「お姉ちゃんはふんわりしてそうで、我が道を真っ直ぐ進んでいく強さがあって…でもやっぱりのんびりと‘えーそのワンピースも欲しいの?まあいいか’っておおらかで…誰にも似ていない。お姉ちゃんはお姉ちゃんだなっていつも思う」
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