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それから毎晩、どちらからか電話をして10分ほどだけ話すというのが心地よい日課となってきた。といっても…まだ火、水、木の3日だけだが。 金曜日には竹原くんが、久しぶりに事務所まで来た。復帰に向けて頑張っている社長を激励するという目的で、それを動画配信するという。これは赤松さんたちのアイデアで‘竹原ロス’の声に応えて再注目を狙うらしい。社長のチャレンジも注目度は高いのだが、年齢層が偏っている。竹原くんは幅広い年齢層から注目されていたので今回の起用となった。 こうして自分たちでアイデアを出してくるのはいい傾向だ。 「竹原くん、アイドルの扱いだな」 「そう思って、俺も新しいカラーリングをして来たんですよ。バッチリ動画内で宣伝してきました」 撮影を終えて、俺の前で毛束をひとつまみした彼は、透明感が出やすいブルーグリーン系のカラーにアッシュを重ねたカラーで軽さが出るのでふわふわとした好印象の持たれやすいヘアーカラーになりまーす、と配信の調子で教えてくれるが俺にはよくわからない。 「どうしてその色チョイス?」 「学生が夏休みに入ってるんで、これくらい攻めたカラーの方がウケると思うんですよ。今グリーンっぽく見えるでしょ?1年で一番思い切ったカラーに出来る時期だから」 「なるほど。今日は休みなのに来たんだろ?昼ご馳走するよ…もう13時になるな。行こう」 「ありがとうございますっ。天丼お願いします」 いつも天丼をお願いしてくる彼と定食屋へ向かうと 「キャー竹原さんだ」「こんにちは」 河北さんも含めた4人の北さんが出てきたところで出くわした。
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