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夏休みの土曜日だけあって水族館には大勢の人がいた。それでも大きな水槽を眺め、二人で話しながらクスクスと笑い合うのは心地いい。
胸にポケットがあるだけのシンプルでゆったりとした白Tシャツにレモンイエローのロングスカートが似合っているはづと、どちらからともなく自然に手を繋ぐと二人で顔を見合わせた。
「大丈夫?」
「大丈夫どころか落ち着いてる。はづだからな」
「うん、私も安心」
「うん」
「でも私、あっつい外でべったべたの手汗とか気にしながらひっつくのは好きじゃない」
「うん」
「だから、私が手を放しても気にしないで」
「はづのそういう言葉が好き」
「どうも~白T、被ったね。お揃いみたいに見えるよね?」
「そうか?スカートも似合ってる」
「ありがとう。これは、お姉ちゃんのじゃなく私が買ったスカート。ビタミンカラーが似合うっていうのはお姉ちゃんの診断」
「はづにはプロがついてるのか」
「勝手にね‘そのくすみカラーよりクリアなカラーが葉月には似合うよ?’って」
「似てる、似てる」
「声質が似てるからね。お姉ちゃんの真似は難しいよ?」
「だろうな。あの柔らかい語尾でいながら言葉はクリアに発する」
「でしょ?何だかゆる~くて優しいアナウンサーのような?」
「うまいこと言うな。ゆづが今頃くしゃみしてるぞ」
「ベビちゃんがびっくりしちゃうね」
またクスクスと笑い合いながらゆっくりと進む。人波を乱す子どもたちの動きが頻繁に目に入り、こちらの足を止められることもあるが、それもただ子どもらしく、微笑ましく見えた。
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