ⅩⅠ

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ⅩⅠ

‘私が鍵を持っていない理由がはっきりとしたよ’ 「どういうこと?リフォームに入るから湊が持っていたんじゃないのか?」 ‘そうなんだけど、もうドアが電子錠に変わってるんだって’ 「ああ…じゃあ、はづは元々の鍵を使わずじまいってことか」 ‘そういうこと’ 「そうか。じゃあ、明日はまず湊に鍵をもらわないと何ともならないんだな?」 ‘うん。駅までにーさまが迎えに来てくれてそのまま部屋を見てくるね。任せるって言ってたのに‘こっちに来るなら確認して’って言ってたから何かいじったのかなぁ?’ 「だろうな。ゆづは?」 ‘暑いからお留守番って言ってた。まだ安定期ではないからね。仕事に行ってるだけでも気になるところだよ’ 「湊は今の俺の部屋を知らないから、はづはゆづのマンションで待ってて。どうせ会うんだろ?」 ‘そのつもり’ 「ん、電話くれたら迎えに行く」 ‘ありがとう’ 「俺、8月の13日から2週間27日まで休み取ったから、はづの引っ越しに合わせて預かっている荷物を運ぶし、まだ買うものもあるだろうからそれも手伝うよ」 はづはお盆休みのあと少し出勤して20日が最終勤務。22日に引っ越しと決めていたから俺も合わせて休みを取った。 ‘嬉しいけど…そんなに休んでいいの?’ 「契約時に年間休日は決まっているんだが、ゴールデンウィークも働いていたし休みは取れる。1年で使いきらないとダメだからな」 ‘ありがとう、だいさん。お願いします’ 「休みの最初は実家で妹たちと会うこともあると思うけど、あとははづの予定に合わせて動くよ」 ‘引っ越しまでに荷物を入れてもいいと思うんだよね。リフォーム具合にもよるから、明日にーさまに聞いてみる’ 「じゃあ、湊のマンション集合で相談しよう」 ‘ふふっ、だいさんと私が勝手に人の住居で相談しようって可笑しいね’ 「湊とゆづのマンションだからいいだろ?」 ‘絶対にいいね。事務所だってあるし、カフェだってあるんだもん’
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