ⅩⅠ

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俺とゆづのいるリビングのドアを一旦開けたはづが引き返したようで、ゆづと顔を見合せる。 「にーさまも、ちゃんと手洗いうがいして。ベビちゃんのママが風邪ひいたら大変でしょ?お薬飲めないんだから」 開いたままのドアの向こうからそう聞こえた直後に‘ガラガラガラ…’爆音と言っても大袈裟でないほど豪快なはづのうがいが聞こえくる。 「俺もしてくる…」 「すみません。気を使わせて」 「いや。はづの言う通りだよ」 俺が二人のいる洗面所を覗くと 「もしかして…今から手洗いされます、大五郎さん?」 「面目ない、葉月さん」 「ウィルスを一匹たりとも持ち込んではいけませんのよ、大五郎さん?」 「おっしゃる通りです、葉月さん」 「そのコントはいつまで続く?いつまででもかまわないが…僕が手を拭く邪魔しないでくれ。タオルが取れない」 無表情の湊に言われて二人で一歩下がると 「ごゆっくり」 手を拭いた湊がリビングへと向かった。 「ただいま、夕月」 「おかえりなさい、しろさん」 「変わりは?」 「ふふっ、2時間くらいで変わりはないよ」 「それならいい」 聞こえてくる湊とゆづの声に、はづが小さく言う。 「癒される会話だ…で、ベビちゃんが聞いているんだよね」 「はづの声もな」 「…お上品にお喋りしなくっちゃ」 「生まれてからギャップに驚いて泣かれるより、今から素で行け」 「だいさん、天才。そうする」
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