第二章

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「傘、ないのか」  第一声が俺のその言葉だった。  もっと他に言うことはあっただろうと思いながら精一杯の勇気で俺は少年に近づいて話しかけていた。  最初、少年は不思議そうに首を傾げて俺の顔をまじまじと凝視した。黒々とした目が大きいなとしみじみ思った。身長は俺より低く頭一つ分ぐらい低かった。 「風邪ひくぞ」  俺は手に持ってさしていた傘を少年の頭の上に持っていき、いわゆる相合い傘をした。少年は嫌な顔一つもせず、むしろ生き生きとした表情で、 「ありがとう~」  とふんわり微笑みながら礼を述べた。 「あ、いや。どうも……」  急に照れくさくなり頬をかく。 「ふふ」 「な、なんだ」 「ううん、優しい人だな~と思って」 「そうか?」  いきなり声を掛けておせっかいのように傘に入れる俺が優しい人か……
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