第三章

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「たまにはどこか行きたくないのか?」 「そうだね~例えば?」  また、逆に質問された俺は深く思案した。よさげな所を幾つか候補として奏太に言ってみた。 「喫茶店、本屋、博物館、図書館とかどうだ」  どこもありきたりな俺がよく行く場所だ。奏太は目をキラキラ輝かせながら喜んだ。 「全部行きたいね」 「だろ」 「きっと行ったらとても楽しくて、帰りたくなくなっちゃうかもしれないね」 「また、行けばいいさ」 「そう、だね……」  また、奏太の顔が切なげに見えてなんだかまた次がないかのように思えた。  相変わらず夜は雨が降り続いている。不思議とこの雨が誰かの涙のように思えた。そう思うと心がキュッと締め付けられて俺はちょっとだけ悲しくなった。
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