第一章

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 その日も一日の激務を終えた俺はやっとの思いで、オフィスビルから出て空をぼんやり見上げた。分厚い重々しい雲が広大な空を覆ってそこから雨が降りしきっていた。  六月に入ったとたん梅雨入りが発表されて、ここしばらく雨続きだ。雨好きな俺としては喜ばしいことだ。別段雨にいい思い出があるわけではないが、ただ単純に雨が好きなだけだ。  紺色のシンプルな無地の傘をさして俺は雨の中へと歩き出した。
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