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美澪
「絶対アイツなんかに負けるもんか」
そんな思いを胸に、友達を流桜坂の手前で待つ。友達って言っても本当に仲いいわけでもない。ただ、"ボッチ"だと思われないようにする。それだけのために友達といる。光希とも、初めは仲良くしようとしたんだ。でも、光希はトロかった。ウザかった。だから辞めた。
「みれみれ遅くなってごめ〜ん」
甲高い声で沙知が呼ぶ。はいはい、許しますよ。よく見ると、沙知の後ろ
に沢山友達がいた。どんだけ誘ったんだよ。
「ほんっとごめん!受験票探してた」
「いいよ、勉強する時間取れたし」
そう言ってかわしておく。そして坂を登り始める。ちなみに、そのときに話すのは全く受験に関係ない話。どうやら今日は、テレビの話みたい。よく受験前日にテレビ見れたよな、沙知?
「あ、あそこに光希いるよ〜声掛けなくていいの?」
なんか嫌味っぽいな。この声は沙知じゃない。華灯かな?振り向くと、意地悪くニヤニヤしながら華灯がこっちを見ていた。そんなにいうなら自分で声掛けろや。でも、一応声はかけておく。
「へえ〜光希も受けるんだ」
頑張ってバカにした口調を作る。
「ま、受かるとは思わないけどね」
光希の賢さなら受かりそうだけど。
「せいぜい頑張りなよ」
頑張らなきゃいけないのは私のほうかも。
私の後ろではまだテレビの話が続いている。
でも、テレビの話なんて、ついていけるはずないから、ほっといて先へ進む。だいたい、テレビ見るぐらいなら受験するなや。本命じゃないならやめろや。そのせいで本命の人が落ちるかもしれないのに…
「みれみれ待ってよぉ〜」
無視無視。ついてけない話題振ってるの沙知の方でしょ。
「置いてかないでよ〜」
「うるさいわねほっといてよ‼」
声を荒らげてしまった。みんな喋るのを辞めた。立ち止まって見物してる人もいる。沙知は驚きを隠せずにこっちを見ている。話についていかなかったからか、みんな沙知の味方につく。華灯を中心として非難轟々。
「沙知に何いってんの?」
「一番の友達じゃなかったの?」などなど。
もうこのグループにいる必要なんてない。足は、逃げるように先へ進んでいく。いつの間にか走っていた。この状態で受験すんのか、まじで最悪。
そのまま走って受験会場につき、順番に並ぶ。2個前には光希・花菜ペアがいる。何なら私もあそこに混ぜてもらおうかしら。それは駄目だな、未だに私のプライドが拒否反応を上げている。順番は光希の番。あまりにも受験票を出すのが遅かったから、つい口を出す。
「あのーさっさとしてくれません?こっちは待ってるんですよ」
ごめんね光希。私もこんなこと言いたくない…でも言っちゃう…性格なの…許して…
泣き出したくなっても後の祭り。すぐに順番が回ってくる。受付の人は私のお母さんだから、ちょっとお小言をいただきつつ会場へ向かう。
暇だな。何しよっかな。アイツラうるさいな。まさかと思うけどアイツラと部屋一緒じゃないよな?
…一緒だし。一番名字が近い人をあのなかから探す。
…沙知だし。ほんと最悪。あ、でも大丈夫だ。名前じゃなくて申し込み順だから。
…同時に申し込んだんじゃなかったっけ?やっぱ駄目だ。シャッフル順だったら?そんなめんどくさいことしないだろう。
すでに頭痛がしてきているけど会場の中へ入る。隣は…よかった、見ず知らずの人だ。誰だろうか、いかにも賢いですっていうオーラまとってるし。なんかプレッシャーだな。「開始2分前です。携帯電話や参考書などは足元のカバンに置き、机の上には鉛筆もしくはシャープペンシルと、消しゴムだけにしてください。」そんなアナウンスが聞こえる。もういいから始まっちゃえよ。「開始です。」やっとか。そう思いながら問題用紙を開いた。
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