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光希
「すぅーーーーーはぁーーーーーー」
私は深呼吸をしながら流桜坂を登る。今日はとても大事な受験の日。この日のためだけに私は頑張って来た。大学受験の話だな?と思ったひともいるかもな…実はそうじゃないんだな〜
今から私が受けるテストは、長期間課外学習に行くためのテスト。なぜ課外学習に行くのに受験が必要なのかって?それは、今私が住んでいる街から最も離れている県に3年間、もちろん泊りがけで行くから。校長先生いわく、「とても高額な費用が必要なため、生徒の中から優れている5名のみを連れていきます」だって。今日はそのテストを受けに行く。面接は1週間後らしいよ。
かなり急な流桜坂を登っていると、キャハハハはとかマジ⁉とか言う声が聞こえた。嫌な予感がする。この声は…と思い振り向くと、声の主は美澪だった。美澪はクラスのリーダー的存在で、私の敵。めちゃめちゃ美人。
「へえ〜光希も受けるんだ」
バカにしたような口調。
「ま、受かるとは思わないけどね」
取り巻きの子たちがクスクス笑う。
「せいぜい頑張りなよ」
「私の光希に何いってんだこらー!」
途中から割り込んできたのは私の友達の花菜だ。大大大親友だから、今日も私を守ってくれてる。
やっとこさ坂を登り終え、試験場を探す。でも、試験場は龍王坂のすぐ近くにあるから探すまでもなかった。受付の人が立っていて、受験票の確認をしている。長い行列ができていたので、後ろに並ぶ。やることも特にないので参考書を開く。ピロリロリン♪とのんきなスマホの着信音がなる。誰からだよ、と思いながらスマホを開く。家族からだった。この忙しいときに。暇だけど。既読だけつけてまた参考書に目を落とす。でも、普通の受験とは違うから特に役にも立たない。あと何番かな。いつ行けるかな。そんなことを考えながら列に並んでいる自分がいる。
私の順番が回ってきて受験票を出す。…どこいった?なかなか見つからない。ボーッとしとくんじゃなかったな。受験票出しとくんだった。バックを探し回った末に見つけ出した受験票を出して説明を受けてたら、後ろから声がした。
「あのーさっさとしてくれません?こっちは待ってるんですよ」
またアイツかよ。美澪かよ。無視無視。
迷惑なはずなのに受付の人は「気にしなくていいですよ。受験頑張ってください」なんて励ましてくれる。ん?なんか違和感がある。受験部屋の前にたどり着いたので違和感の正体を探る。あの時、確かに「気にしなくていいですよ」といった。でも、それじゃあ美澪を悪者として扱って、(私から見たら悪者だけど)私を庇ったみたい。それじゃ公平性の欠片もない。情報通の花菜に聞くと、受付の人は美澪のお母さんだったらしい。それで気にしなくていいですよ、だったんだね。
さあ、今から試験が始まる。受験部屋の扉が開く。自分の席を探し、軽く周りを見渡す。隣は花菜。やった!心のなかでガッツポーズをしながらアナウンスを聞く。試験だ。受かれば夢のような世界、落ちたらこのままの世界。部屋の前で約束したこと。「二人一緒に受かろうね。」絶対に達成してやる。また、アナウンスが流れる。開始、2分前です。だって。やったことを全て出し切る。開始します。そのアナウンスと同時に、私は問題に取りかった。
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