僕の声で僕が君に伝えたかった事

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そうして、ついにやってきた決行の日。 どんなかっこいい言葉を残そうか……さんざん考えた挙句、結局思いついたのはいたって平凡な言葉。 「今までありがとう。これからも僕とずっと一緒にいてください」 それだけ。 そのあとは、絵美の顔を見て考えるつもりだ。それだって、緊張してちゃんと言えるかもわからないけれど。    あとは、右手に握ったナースコールを親指で押すだけ、距離にするとほんの一ミリだ。 刻一刻と、その時が近づいてくる。掌に汗がにじんで、脈が上がる。絵美はなんと答えるだろう……ちゃんとこれがプロポーズだとわかってくれるだろうか……  奇跡の一分が近づいてくる…… 掌に握りこんだナースコールを、だが、どうしても押すことができないのだった……
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