4・DDくんの秘密(後編)

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4・DDくんの秘密(後編)

「言うなっ!」 両手で顔をおおった北宮くんがするどく叫ぶ。 「つい数行読んじゃっただけだし、普通のファンタジー小説ぽかったし、そんなにも絶望することじゃ……」 北宮くんの取り乱しようにオロオロしながら、彼にあわせて私も床へしゃがむ。 「あんたが勝手に他人の物さわるような奴だとは思わなかった! 最低だな!」 「見ちゃったのは偶然なの! ノートが落ちてマウスに当たって、偶然……」 「クッソつまんねー駄文(だぶん)読んじゃってウケる、てか?!」 「私そんなこと一言も言ってないし! 数行読んだだけで面白いかそうじゃないか、なんて分からないし! というか北宮くんこそ、何で私のノート持ってるのよ?!」 北宮くんの横に落ちている、私のイラストノートを取り上げ、守るように抱きしめる。 「ノート? ……そのノート、あんたのだったんだ?」 北宮くんは顔をおおっていた手を外し、ノートを死んだ魚みたいな目で見ながら、ぼんやりした声で言う。 「そうよ! なくしてからずっと探してたのに、北宮くんが持ってたなんて……」 「文化祭の片づけしてる時に見つけたんだ」 「先生に『落とし物です』と言って、預けてくれたらよかったのに。そしたら、職員室前にある落とし物ケースに入れてもらえたのに……」 職員室前にある落とし物ケースというのは、小さなガラス張りのショーケースのことだ。 ケースには鍵がかかっているため、自分の落とし物をそこで発見しても、先生に頼んでケースを開けてもらわなければ、返ってこない仕組みになっているけど。 「家帰る直前に見つけたから、つい持って帰ってそのままにしちゃってた」 「中、見た?」 「そりゃまぁ見たよ」 「なら、おあいこじゃない? お互い、他人にはあまり見せたくないものを見あったんだから」 北宮くんは眉間にシワをよせて口をへの字にし、「おあいこ……」とおうむ返しにつぶやく。 「絵と文でジャンルは違っても、理解ない他人に見られてバカにされたら嫌だなとか、恥ずかしいなという気持ちはすごく分かる。だから私、誰にも言わないよ」 「……絶対に秘密だからな? 誰か一人にでもバラしたら、あんたのこと本気で許さねぇからな?」 「約束しろ」と、くちびるをとがらせたすね顔の北宮くんが、小指を立てた右手を私へ突き出してきた。
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