14・恋ってやっぱりダメ!

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14・恋ってやっぱりダメ!

高校最寄り駅前近くで、北宮くんはようやく早歩きをやめて立ち止まり、私の手首を放してくれた。 「ごめんな、千代岡さん」 「何が?」 「メイ先輩が、千代岡さんのことハブろうとするのに気づいてたのに、上手く対処できなくて」 「あ……」 そりゃあんなにもあからさまじゃ、北宮くんだって気がつくよね。 『形だけの恋人』に私を指名した時、このことでイジメをしたら許さない! というようなことを宣言した手前、知らないふりをするわけにもいかないし。 「『これから別の用事がある』というの、メイ先輩の嘘だろ?」 「うんまぁ、そう」 「オレの『親から帰ってこいという連絡が来た』も、『母親が怒ってる』てのも、嘘」 「あぁやっぱり……」 聞かされた時、北宮くんの帰らなきゃならない理由を一瞬信じた。 だけど北宮くんが私の手首をつかみ、長谷部先輩をふり切ろうとした時点で、これは嘘だと気がついた。 「メイ先輩が『今フリーでさびしいんだよね』と言った時点で、オレをカレシ役にしたいんだなぁとは分かったんだけど……千代岡さんのこと邪険にしすぎだろ。オレ、ああいうの嫌い。 だから、千代岡さんが食べたいと言ってたクレープ食ったら帰ろう、とクレープ屋に着く前から決めてたんだ」 北宮くんは腕を組んでうつ向き気味にため息をつき、不機嫌そうに斜め上を見て、駅のロータリーへ次々に入っていく車を十秒くらいながめた後、最後に私を見て言った。 「オレのせいで嫌な思いさせて、ごめんな」 こんな風なことが起こると分かっていたから、形だけでもあなたの恋人になんてなりたくなかったんだよ。 ――などという言葉は私の口からは出ず、私はあいまいに「うん」とだけ言った。 不快だったのは事実だけれど、それに対しての私の怒りの矛先は根本的原因の彼ではなく、邪魔者扱いしてきた当人の長谷部先輩に向いている。 「昔はあんなガツガツした人じゃなかったんだけどなぁ? 高校行って変わっちゃったのかなぁ?」 雲ってきた空を見上げてボヤく北宮くんに対し、それは違う、と私は思った。
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