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だって長谷部先輩は、「『もう少し女の子のことを学んで、旭が今よりイイ男になったら、またつきあってあげる!』と言って、修行の旅に出した」と、言っていたから。
つきあっていたころの先輩は、北宮くんに自分のそういう面を見せていなかっただけだと思う。
「……北宮くんは高校生になったら、また長谷部先輩とつきあうの?」
「は? 何で?」
目をぱちくりさせる北宮くんに、私は怒りにまかせて彼不在時に先輩から言われたことを教え――後悔した。
何やってんだ、私。
こんな告げ口みたいなことして、私ってばすごい嫌な奴じゃない。
私と彼は創作仲間なだけ。相手の異性関係にまで口出ししていい間柄じゃない。
北宮くんが誰とつきあおうが、私には別に関係ないのに……。
「あの人、そんなこと言ってたのか……」
疲れたような顔でため息をつく彼を見て、言わなきゃよかったと、自己嫌悪がつのる。
「帰ろう、北宮くん」
時間は巻き戻せないから、聞いた相手がどう思うかを、もっとちゃんと考えて話さなきゃいけないのに。
バカだし軽率すぎるよ、自分。
長谷部先輩から受けた不快を、北宮くんにぶつけてどうするの。
別れる時にすごく渋られたと言っていたし、私が暴露するまで先輩の負の面を知らなかった彼は、まだ先輩のことが好きだったかもしれないのに。
「そうだな」
私は小さくうなずき、北宮くんより先に駅へと歩き出す。
微妙な空気になってしまったのに、彼とはまだ、地元駅まで一緒にいなきゃいけないなんて……。
あぁやっぱり恋って面倒くさい。
『形だけの恋人』をしているだけでも、こんな風になるんだもん……。
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