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「バイバイ!」と言い捨て、私は走って北宮くんから逃げ出した。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!
大嫌いだ面倒だと思っていたアレが、心の中にあることに気がついてしまった。
私ってば北宮くんに恋をしてしまった!
*
バス停まで全速力で走り、ちょうど来ていたバスへ飛び乗る。
昼前の中途半端な時間の車内は、休日といえど適度に空席があり、助かったと思った。
酸欠理由のドキドキと恋理由のドキドキで、私の胸は壊れそうだったから。
真ん中より少し後ろの席に座り、胸に手をあてて呼吸を整える。
すぅはぁと何度も深呼吸しているとバスが発車し、しばらくすると心臓のドキドキはだいぶ落ち着いた。
でも心の方は全然ダメで。
北宮くん大好き! という高揚感、よりによって北宮くんを好きになってしまったという絶望。
あいいれないこの二つの気持ちがぶつかりあい、心の中では大風が吹き荒れ、大惨事になっている。
好きという感情は幸せなもののはずなのに、目の前が涙でぼやけた。
私、何でこうなんだろう。
またむくわれない恋をしてしまうなんて。
また好きになっちゃいけない相手を、好きになるなんて。
小説の公募のしめ切りさえなければ、北宮くんは誰とでもつきあう『DDくん』。
それって裏を返せば、特別に大好きな相手はいないということ。
北宮くんが私を『形だけの恋人』に選んだのは、私が彼を恋愛対象として見ないだろうと思ったから。
こちらも裏を返せば、彼は私を恋愛対象として見ることはない、と判断したから選んだとも言える。
だから私のこの気持ちは、彼には絶対バレちゃいけない。
今北宮くんが私に好意的なのは、リアルでは唯一の創作仲間だから。
よってもしバレたなら、創作仲間というポジションにすら、私はきっと立っていられなくなる。
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