16・早まる期日

3/4
前へ
/86ページ
次へ
北宮くんからはすぐにそう返信が来たが、眠気がぶり返してきたしムシャクシャしていたので返事はせず、私はスマホの電源をオフにしてベッドへもぐり込んだ。 翌朝の朝食前にスマホの電源を入れ、昨夜の北宮くんとのDMを見返し、後悔するなんて知らずに。 何で、「おやすみ」の四文字くらい打たなかったんだろう……と、自己嫌悪から壁にごつんと自ら頭を打ちつけることを知らずに。 もっと好意をもってもらえそうな返信しなよ! 責める気持ち隠せてなくない?! 私ってば感じ悪ッ! なんて思っても、すべては後の祭り。 * 転校日が早まったことが判明した当日以降、私も北宮くんも、その件についてふれることはなかった。 学校から帰宅してやり取りするDMは、以前と同じく、マンガや小説や創作のことばかり。 だけどそれでよかった。 私は彼とDMを交わしているだけで楽しくて幸せで、片思いをキャンセルしようとする理性は無力で、私は彼のことをどんどん好きになっていった。 トラブルを避けるため以外でも、秘めた胸のときめきがぼろを出しそうに思えて、学校で挨拶する時すら、私は彼の顔をあまり直視できなくなった。 北宮くんとのコミュニケーションの取り方が、DMでなくリアルが主だったなら、「最近変じゃね? どうしたの?」と尋ねられ、彼に恋をしたことがバレていただろうと思う。 だから、オンラインコミュニケーションが主でよかった! と、思っている。 けれど時折、片思いしていることがバレてしまえばいいのに……と、ヤケクソじみた気持ちになる時もある。 本当に恋って論理的じゃなくて、矛盾していて、ワケがわからない。 正二郎お兄ちゃんの時とは違い、今回は進学問題がからんでくるのも厄介だ。 文化祭へ行き、マンガ研究部のレベルが高い部誌を見てしまった私の心は、かなり鏡月高校へ進学する方向へかたむいている。 だけど鏡月高校は、北宮くんが進学を希望している学校でもある。 「好きな相手と同じ高校に通うぞ! 目指せ合格!」という答えに、私はならない。 叶わぬ恋なら、距離をとってできるだけ早くあきらめて忘れ、なかったことにしてしまいたいと思うから。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加